日本語医療センター

パースエクスプレス Vol.215 2015年12月号 掲載


当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第44回目は、「後鼻漏」についてです。

「後鼻漏」について
K子さん(42)主婦


「後鼻漏」について

 花粉症の時期に「なぜだか咳が止まらない」ということがありませんか?また「風邪をひいて、その後、咳だけが長引いてなかなか止まらない」ということがありませんか?長引く咳の原因で最も多いのが、実はこの“後鼻漏”、英語で“PND = Post Nasal Drip”と言われています。

 健康な人間は、鼻の内側の粘膜から1日に2リットル以上もの粘液を生産していると言われます。これが鼻の外に流れ出てくるのがいわゆる鼻水(鼻漏)ですが、通常は知らない間にそのほとんどが喉の奥に流れ込んでいて、それを後鼻漏と言います。

 この鼻水が喉に流れてくる症状(後鼻漏)は何の問題もありませんが、アレルギーや細菌感染などで鼻の内側に炎症が起き、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎になると、この粘液の量が増え、濃くなるため喉に流れ落ちる際に喉に引っかかり、痰(たん)がらみが増えたり、その粘液が喉の粘膜を荒らすため喉が痛んだり、さらに気道に入ろうとするのでそれを防ごうとして咳が出るようになります。また、横になると上気道の解剖学的な位置から粘液がさらに喉に流れ込みやすくなるため、夜間に咳が増える、朝方に痰がたくさん出るなどという症状がみられます。

 当クリニックで受診される患者さんでドクターが鼻の内側の粘膜を診察し、炎症を起こして腫れている場合、この後鼻漏が咳や痰がらみの原因となっていることが多くあります。その際、鼻炎を抑えるための抗ヒスタミン剤や鼻炎用スプレーなどを処方されます。また、鼻の内側を洗浄するのも効果があり、生理食塩水の洗浄用スプレー(Fess Nasal Spray)を勧められることもあります。また、細菌感染による副鼻腔炎を起こしている場合は、合わせて抗生物質が処方されることがあります。「咳なのに鼻の薬?」と疑問に思われる方がいらっしゃいますが、これは鼻の粘膜から産生される粘液を抑えることで、後鼻漏を防ぎ、咳や痰がらみを抑えるという目的の治療法です。

 

回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん

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