パースエクスプレス Vol.210 2015年7月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第39回目は、「乳幼児の食物アレルギー」についてです。
食物アレルギーは通常、無害な食物のタンパク質に身体の免疫機能が異常に反応してしまい、引き起こされるもので、子どもの約20人に1人が持っていると言われています。食物アレルギーは、遺伝するものではありませんが、両親をはじめ、家族にアトピーや喘息、花粉症などのアレルギー疾患を持つ人がいる場合、アレルギー発症のリスクはやや高くなると言われています。
食物アレルギーで多いものは、主に卵、牛乳、ピーナッツやその他のナッツ類(アーモンド、マカデミアナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーカン、ピスタチオ、栗、パインナッツなど)、魚介類、ゴマ、大豆、小麦、蕎麦などです。
たいていは、重度で一生続くアレルギーは少なく、成長とともにアレルギーを起こさなくなりますが、中にはアナフィラキシーと言われる重度のアレルギーによるショック症状を起こすこともあります。
食物アレルギーの 症状は、鼻水や鼻のかゆみ、くしゃみ、喉の痛みや腫れ、目のかゆみや涙が多く出る、口の周りのかゆみや腫れ、皮膚の発疹(じんま疹)やアトピー性皮膚炎、腹痛、嘔吐や下痢、頭痛、機嫌が悪い、元気がないなどが挙げられます。
アナフィラキシーによる急性のショック症状では、喉や舌の腫れ、呼吸困難、意識の消失などが起こり、直ちにアドレナリンの注射による処置が必要となります(エピペン<個人が携帯しているアドレナリンの注射>があれば、直ぐに打つこと、なければ救急車を呼ぶこと)。
オーストラリアでは、重度のアレルギーの症状が出た場合は、アレルギーの専門医が紹介され、検査することになりますが、症状が軽度~中度の場合は、直ぐに検査をすることはありません。食べさせる前からアレルギーがあるかどうか分からないのに心配して、アレルギーの多い食物を制限することは勧められません。初めて食べさせるものは、1回の食事で1種類のみにし、一口あげて様子を見て、問題なければ徐々に増やしていきましょう。
アレルギーは、個人によって反応が違いますから、その子の年齢と状態をみて、どのように対処していくか、自己判断せずに、まずドクター(GP)で受診し、相談しましょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん