パースエクスプレス Vol.209 2015年6月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第38回目は、「頭皮脂漏性皮膚炎」についてです。
前号でお話しました“頭シラミ”は、子どもにとって頭皮のかゆみを引き起す最も多いと思われる原因でしたが、大人で頭皮のかゆみやフケを引き起す最も多い疾患が、この“頭皮脂漏性皮膚炎”、英語ではScalp Seborrheic Dermatitisといいます。
この疾患の原因は、マラセチアと言われる真菌(カビ)が皮脂の多い頭皮に増殖することで、症状はかゆみやフケなどが出てきます。マラセチアは通常、誰もの皮膚に常在している菌ですが、皮脂を好み、ストレスや気候などの要因によって皮脂が過剰となった時に増殖してしまい、皮膚炎を起こすことがあります。
思春期以降の成人に多くみられ、頭皮だけではなく、顔のTゾーンに発生することもあります。生後1~3ケ月の新生児の頭皮にかさぶたのような皮脂の固まりが発生してしまう新生児頭部皮膚炎(Cradle Cap)もこの頭皮脂漏性皮膚炎と同じものです。新生児の場合は、自然に治まるので特に治療は必要ありません。これは伝染するものではありませんし、不衛生が引き起すものでもありません。
治療ですが、症状で炎症がひどい時は、まずステロイドのローションを塗布し、炎症を抑えます(ステロイドはドクターの処方箋が必要です)。そして、原因となるマラセチアの繁殖を抑えるために、抗真菌剤シャンプー(Nizoral 2% Shampoo/薬局で購入可能です)を週2回ほど使用してシャンプーし、1~2ヶ月で落ちついてきますが、繰り返すケースも多く、その場合は時々シャンプーをし続けることが必要になります。たいていはこの治療で落ちつきますが、これで抑えられなければ抗真菌剤の外用薬や内服薬などが必要となることがありますので、ドクターに相談しましょう。
予防としては、皮脂が過剰にならないように定期的にシャンプーをしましょう。頭皮にシャンプー、コンディショナーやトリートメント、整髪剤などが残らないようによくすすいで下さい。そして普段、使用するシャンプーとして「Head & Shoulders」や「Selsun Blue(ピリチオン亜鉛含有)」、「Neutrogena T/Gel」や「DHS Tar(タール含有)」、「Neutrogena T/Sal(セレニウム含有)」などが薦められるものです。ぜひ、試していただき、自分の頭皮の状態にあうシャンプーを見つけて下さい。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん