パースエクスプレス Vol.207 2015年4月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第36回目は、「性器疣贅(尖圭コンジローマ)」についてです。
性器疣贅(せいきゆうぜい)、または尖圭コンジローマは英語でGenital Wartsと言われ、性器や肛門にイボができる性行為感染症の一つです。原因はヒトパピローマウイルス(HPV)で、ウイルスが性行為によって皮膚や粘膜に付着し、傷から入り込み、そこで増殖してイボをつくります。HPVには数多くの種類があり、その中で6型と11型が主に尖圭コンジローマの原因となります。通常、尖圭コンジローマは良性で痛みやかゆみなどを伴いません。イボは膣、外陰部、子宮頸部や肛門、ペニスだけでなく、まれに口の中や咽頭にできることもあります。膣や子宮頸部、肛門の中で触れないところにできると気づかれずに、イボが多数増殖しているケースもあります。
ヒトパピローマウイルスの感染は、性活動の盛んな若い世代に非常に多くみられますが、ウイルスに感染してもイボができるまでには数週間から数ヶ月かかります。感染しても体の免疫の働きによってウイルスが除去され、イボができない人もいますし、ウイルスが増殖してしまい、イボが発生する人がいます。イボが発生した場合、放置すれば次々とイボが増えていきますので、早期の治療開始が大切です。
残念ながら、ウイルスに感染しているかどうかを検査することはできません。イボができれば、大抵は目視で診断がつきます。治療は、できたイボに対してのみで、皮膚や粘膜に感染しているウイルスを除去することはできません。治療方法としては外用薬や凍結療法、外科的切除や電気、またはレーザー焼灼などがありますが、尖圭コンジローマの場合、どの治療法でも大抵は長期間にわたります。イボがなくなっても、ウイルスが残っていればまた増殖して再発することも多いため、根気よく治療を続ける必要があります。オーストラリアにおいて、それほどひどくないケースでは一般医(GP)で外用薬や凍結療法の治療を受けることができます。イボがかなり広範囲に及んで増殖している場合や、膣や子宮頸部、肛門などの内側に発生している場合では専門医への紹介となります。
いかなる性行為感染症においても、正しいコンドームの使用が後悔しないために、誰にでもできる基本的な予防措置です。
近年では、尖圭コンジローマの原因となるHPV6型と11型、また子宮頸がんの原因となるHPV16型、18型に対する予防接種があり、オーストラリアでは8年生の子どもが受けることになっています。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん