パースエクスプレス Vol.202 2014年11月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第31回目は、「禁煙補助薬」についてです。
近年は日本でもオーストラリアでも禁煙傾向が進み、喫煙者にとっては肩身の狭い社会となってきました。喫煙は、様々ながんだけでなく狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳卒中などの循環器系疾患、また肺炎や喘息などの様々な呼吸器系疾患の原因や要因となります。日本でもオーストラリアでも、肺がんによる死亡率は現在も非常に高く、特に女性の喫煙が急速に進んだ80年代の影響で、女性の肺がんによる死亡率は今や他の種類のガンに比べても高く、トップを占めています。
オーストラリアでは一般医(GP)でも、「喫煙は身体に悪いと分かっていても止められない」「何度も禁煙に失敗した」「タバコを止めたい」という相談を受け付けています。
最近では、チャンティックス(Chantix:成分名バレニクリン〈Varenicline〉)と呼ばれる、ニコチンを含まない禁煙補助薬が非常に有効だと言われています。この薬は、脳のニコチン受容体がニコチンと結合できなくなるように作用し、また喫煙の際のドーパミン放出を抑えて満足感を得にくくさせることで、タバコが吸いたくなくなるように仕向けるものです。 用法としては、薬の服用を1週間(7日間)続け、禁煙は8日目から実行します(1週間後からはタバコを吸ってはいけません)。最初の1週目は半分の量を服用し、2週目から増量して最低12週間は続けることが勧められています。副作用として軽い吐き気がよくみられますので、服用は食後に多めの水で行なうようにしましょう。
これはまれですが、深刻な副作用として行動の変化、うつ症状、自殺企図などが挙げられています。服用中に何か問題があるようであれば、直ちにドクターに相談してください。
チャンティックスは、禁煙補助薬として効果が高いと言われてはいますが、決して魔法の薬ではありません。これだけに頼らず、まずは自分がどんな時にタバコを吸っているか考えてみて、それに代わるものを見つけなければなりません。食後に吸いたくなる人は「ガムを噛む」「飴をなめる」、お酒を飲むと吸いたくなる人は「おつまみを食べる」「お酒を飲まない」、また普段からも「タバコを吸う場所に近づかない」など、自助努力をするよう気をつけてみましょう。もし周りの人から勧められたら、力強く“NO!”と禁煙を宣言し、理解と協力をお願いしましょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん