パースエクスプレス Vol.201 2014年10月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第30回目は、「皮脂欠乏性湿疹」についてです。
皮脂欠乏性湿疹(Asteatotic Eczema)は、パースにいらっしゃる日本人の方の中で、一番多い皮膚のトラブルです。これは皮膚の乾燥が過度に進み、本来皮膚を外界の刺激から守っている自然な皮膚の油分(皮脂)がなくなっていくことで、かゆみや皮膚の落屑(皮膚が粉を吹く、ぼろぼろとむけてくる状態)、湿疹が出現するものです。
“日本と水が違うせい?”と思われる方がいらっしゃいます。パースの水は日本の軟水と違って硬水で、カルシウムやマグネシウムを多く含んでおり、体の洗浄に使うと肌のごわつきや髪のばさつきを感じやすい傾向があります。しかし、それは“硬水だから皮膚に悪い”ということでは決してありません。
パースは空気が非常に乾燥しており、それだけですでにほとんどの人の皮膚は乾燥している状態です。その上で、石けんでゴシゴシこすって身体を洗ったり、熱いお湯で長々とシャワーを浴びたり入浴したりすると、皮膚を守る皮脂がさらに失われてしまいます。
皮膚を守るために、日ごろから以下のことに気をつけましょう。
それでも湿疹が出現してかゆみがある場合は、早めにドクターの診察を受けましょう。治療として多くの場合、ステロイド外用薬やかゆみをおさえる抗ヒスタミン剤の内服薬などが、短期間処方されます。ステロイドを使うことに抵抗のある方が多くいらっしゃいますが、ステロイドは皮膚組織の炎症を抑え、またその炎症により肥厚した皮膚を改善し、色素沈着を防ぐ効果があります。局部の、しかも短期間のステロイド剤の使用は安全ですので、過度の心配はしなくてよいでしょう。あまり使いたくないといって少量しか塗布しなかったり、すぐに止めたりする方がいますが、これではあまり効果が現れずに結局長期間使い続けることになります。ステロイド外用薬は、処方されたら短期間で効果的に治せるようにしっかり塗布しましょう。そして、湿疹が落ち着いたらドクターの指示を受け、ステロイドを使わず、先に述べたように日々の皮膚のケアに気をつけて、再発しないようにしましょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん