パースエクスプレス Vol.200 2014年9月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第29回目は、「オーストラリアの花粉症」についてです。
オーストラリアは世界でも有数の、花粉症を含む喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の発症が多い国で、特にここ西オーストラリア州は国内でも花粉症の発症が多い州となっています。
8月後半から9月に入り、雨が落ち着いて気温が上昇してくると、オーストラリアでも花粉症の時期が始まります。日本では、花粉症の原因と言うと“スギ花粉”が代表的ですが、オーストラリアで多い原因は、様々な種類の芝、SILVER BIRCH(シダレカンバ)、MAPLE(カエデ)、OLIVE(オリーブ)などの木、様々な雑草などからの花粉となっています。花粉の時期はその植物にもよりますが、9月から翌年の4月または5月まで、数ヶ月に及びます。
さて、今まで花粉症になったことがなかった人も、ある年から急に症状が出ることがあります。これは日本にいても、オーストラリアにいても関係ありません。日本では何もなかったのに、こちらに来て花粉症になった、あるいは「オーストラリアにもう3、4年いて、今まで大丈夫だったのに今年初めて症状が出た」などは、よくある事例です。ある年、急に免疫システムが体内に侵入した花粉に反応を示し、目や鼻、のどのかゆみ、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、頭痛やだるさなどを引き起すのです。
人間の身体には体内に侵入しようとする異物を排除するための免疫機能がありますが、この免疫が身体に害を及ぼす異物に対してではなく、本来は無害な物質に対して過敏に反応してしまうものを、アレルギー反応といいます。
ただ、近年のアレルギー疾患の増加には、昔に比べると清潔になりすぎた環境が影響しているのではないか、と言われています。予防接種によって、子どもの頃にウイルスや細菌などの感染症に対してあまり接触することがなくなり、免疫機能がそれらの異物に抵抗しようとしなくなってしまうからです。そして逆に、接触してくる無害なものに対して抵抗しようと過敏に反応してしまい、アレルギーを引き起こしてしまうのです。
そのアレルギーですが、日本での検査は、病院で即日に、簡単にできる皮膚のパッチテストが一般的ですが、オーストラリアでは特に重症のアレルギー症状でなければ、検査は行われません。もし必要であれば、GP(一般医)では血液検査が一般的に行われます。IgE抗体という特殊なタンパク質の数値が上昇していると、「身体の中で何かに対するアレルギー反応が起こっている」という診断ができます。そして、花粉や芝、ハウスダスト、犬や猫、ピーナッツ類、大豆というような基本的なものに対するアレルギー反応を検査することができます。しかし、それ以上の詳しい検査が必要とされる場合はアレルギーの専門医へ紹介を受けることになります。
当地での花粉症の治療には、主に抗ヒスタミン剤やステロイド剤の目薬、鼻のスプレーや内服薬がそれぞれの症状に応じて使われます。抗ヒスタミン剤は、ドクターの処方箋なしでも薬局で直接購入することができますが、ステロイド剤は処方箋が必要です。花粉症なのかどうかわからない、どの薬を使えばいいのかわからないというような方は、まずドクターの診察を受け、適切なアドバイスをもらいましょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん