パースエクスプレス Vol.195 2014年4月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第24回目は、「鉄欠乏」についてです。
鉄分は、赤血球のヘモグロビンの中に含まれて体中に酸素を運ぶ、重要なミネラルの1つです。体内に取り込まれる鉄分が少ないと、肝臓に貯蔵されている余分の鉄分(フェリチン)が使われます。体内中の鉄分が不足すると、“鉄欠乏(Iron Deficiency)”、さらに進行してヘモグロビンが減少すると、“鉄欠乏性貧血(Iron Deficiency Anaemia)”と呼ばれる症状になります。
鉄欠乏には段階があります。
女性は生理過多、妊娠あるいは授乳中、ダイエットなどの理由により、鉄欠乏になることが非常に多くあります。また、偏食で鉄分を食事から取れていない人、成長期の子ども、激しい運動をするスポーツ選手、あるいは胃潰瘍やポリープ、胃がん、大腸がんなど消化管の病気がある人にも起こります。“鉄欠乏”が指摘されたら、何が原因になっているのかをさらに調べることが重要です。
“鉄欠乏”では、多くの場合2、3ヶ月間の鉄剤の服用が処方されます。また、鉄分の多い食事(全粒〈Wholegrain〉 シリアル、牛肉、レバー、卵、魚、ほうれん草、ブロッコリー、乾燥アプリコット、レーズン、ナッツなど)を豊富に取ること(ただし妊婦の方はレバーは避けること)、鉄分はビタミンCと一緒に取ると吸収がよくなるので果物や野菜と一緒に取ること、また逆にコーヒーや紅茶、緑茶にはタンニンという成分が含まれ鉄の吸収を妨げるため、これらは食事の前後では避けること、などが勧められます。そして、“鉄欠乏”の原因(生理過多や消化管の病気など)の治療も必要です。
鉄は、逆に過剰となると体内で毒性を発するため危険です。くれぐれも、自己判断で鉄剤のサプリメントなどを過剰摂取しないようにして下さい。鉄欠乏かどうかの検査は、血液検査のみで簡単にできます。気になるようなら、ドクターの診察を受けましょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん