パースエクスプレス Vol.191 2013年12月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第20回目は、「帯状疱疹」についてです。
「帯状疱疹(Herpes Zoster)」とは「水ぼうそう」の再発を指し、英語では一般に“Shingles”と呼ばれます。子どもの頃にかかった「水ぼうそう」は水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus)の感染によるものですが、このウイルスは「水ぼうそう」が治った後も身体から完全に消えることはなく、いろいろな部位の神経節で眠っている状態となります。大抵は、免疫がその活動を抑えているのですが、大人になり、加齢や肉体的あるいは精神的ストレスのよって免疫が弱まった時に再活動を始め、神経に沿って増殖し、身体の片側に帯状に赤みのある水ぶくれとそれに伴うかゆみやしびれ、痛みなどの神経症状を発症します。これが「帯状疱疹」と呼ばれるもので、体力が低下してくる50代以上の方に多くみられますが、20~30代の若い年代にも珍しくありません。
治療は、抗ウイルス薬の服用です。服用の開始は、発症して早ければ早いほどウイルスの増殖を早く抑えることができ、神経へのダメージを防ぎます。発症して72時間以内の服用開始が望ましく、72時間を超えるとその効果はあまり望めません。痛みがある場合は、その間に痛み止めの服用を併用します。放っておいても3~4週間で自然と治まりますが、神経にダメージが及ぶと、後に「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる慢性の神経痛の原因となることがあるため、早期の治療開始が必要です。
「水ぼうそう」にかかっていない、あるいは予防接種を受けていない人(特に乳児)が、「帯状疱疹」を発症している人に接触すると、「水ぼうそう」を発症することがありますので注意が必要です。
近年では「水ぼうそう」のワクチン接種(西オーストラリア州では生後18週で接種)が行なわれているため、「水ぼうそう」にかかることは、そう多くはありません。ワクチン接種を受けている場合、後の「帯状疱疹」の発症も稀となり、発症してもごく軽度だと言われています。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん