パースエクスプレス Vol.190 2013年11月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第19回目は、「虫刺され」についてです。
虫に刺され、ひどいアレルギー反応を起こして受診する患者さんは多く、特にこれからのように暑くなる季節は被害が続出します。例えば「蚊」に刺された場合、「蚊」の種類だけで約80もあるため、今まで刺されたことがない種類の「蚊」に刺されると、アレルギー反応が強く起こってひどく腫れ上がり、かゆみが止まらない、などという症状が起こることもあり得ます。
「蚊」による虫刺され以外で被害が多いのは、「ベッドバグ」「サンドフライ」「ノミ」「疥癬ダニ」などで、それぞれの虫には、それぞれの対処法が必要となってきます。しかし、どのような虫に刺されても、基本的に治療は同じです。かゆみを抑えるための抗ヒスタミン剤の服用と、局所の炎症を鎮めて、後の色素沈着を防ぐためのステロイドの外用薬の塗布が、主な治療となります。アレルギー反応が特にひどい場合には、ステロイドの内服が必要になることもあります。疥癬を発症した場合だけは別で、原因となる身体に付着した「疥癬ダニ」とその卵を殺すために、全身に塗る治療用の特別な外用薬も必要です。また、虫刺されの炎症部分に、細菌による二次感染を起こして化膿してしまった場合は、抗生物質の服用が必要になることもあります。大抵は痕を残さずに治りますが、皮膚の色が完全に元に戻るまでには2~3ヶ月程度かかるでしょう。
虫刺されは、何よりもまず刺されないようにすることが大切です。長袖、長ズボンで肌の露出をできるだけ避けること、必ず虫除けスプレーを使用すること(虫除けスプレーは“DEET”という殺虫成分が多く含まれているものほど効果的です。“DEET”高含有のスプレーは、キャンプ用品の店で購入できます)、ツアーなどに参加する場合は、なるべく自分専用の寝袋を持っていくこと、またバックパッカーズ・ホステルなどに滞在するときでも自分用のシーツなどを使うこと、などが虫刺され予防のポイントとなります。「疥癬ダニ」を含め、たいていの虫は50度の熱を10分以上当てることで死滅します。ベッドリネンなどは熱湯または高温の乾燥器を使用して、こまめに洗濯するとよいでしょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん