日本語医療センター

パースエクスプレス Vol.188 2013年9月号 掲載


当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第17回目は、「花粉症」についてです。


花粉症について
L太さん(27)ワーキングホリデー

最近目がかゆく、くしゃみが止まりません

 8月後半から9月に入り、雨が落ち着いて気温が上昇してくると、オーストラリアでも花粉症の時期が始まります。オーストラリアは、世界でも有数の花粉症を含むアレルギー疾患の発症の多い国で、特にここ西オーストラリア州は、オーストラリア首都特別地域に続いて国内で2番目に花粉症の発症が多い州となっています。

 人間の身体には、体内に侵入しようとする異物を排除するための免疫機能がありますが、本来は無害な物質に対して過敏に反応してしまうものを「アレルギー反応」といいます。

 今まで花粉症になったことがなかった人も、ある年から急に症状が出ることがあります。これは日本にいても、オーストラリアにいても関係ありません。ある年、急に免疫システムが体内に侵入した花粉に反応を示し、目・鼻・のどのかゆみ、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、頭痛やだるさなどを引き起します。

 日本では、花粉症の原因というと「スギ花粉」が代表的ですが、オーストラリアで多いのは、様々な種類の芝やSilver Birch(シダレカンバ)、Maple(カエデ)、Olive(オリーブ)などの木、様々な雑草などからの花粉となっています。花粉の時期はその植物にもよりますが、9月から4月または5月まで、数ヶ月に及びます。

 近年のアレルギー疾患の増加には、昔に比べ清潔になりすぎた環境が影響しているのではないか、と言われています。予防接種によって、子どもの頃にウイルスや細菌などの感染症にあまり接触することがなくなり、免疫機能がそれらの異物に抵抗しようとしなくなってしまい、そして逆に、接触してくる無害なものに対して過敏に反応し、アレルギーを引き起こしてしまう、とのことです。

 アレルギー検査は、日本では病院に行き即日で簡単にできる「皮膚のパッチテスト」が一般的ですが、オーストラリアでは特に重症なアレルギー症状でなければ検査は行われません。もし必要であれば、GP(一般医)では血液検査が一般的です。「IgE抗体」という特殊なタンパク質の数値が上昇していると、「身体の中で何かに対するアレルギー反応が起こっている」という診断がされます。また、花粉や芝、およびハウスダスト、犬や猫、ピーナッツ類、大豆というような、基本的なものに対するアレルギー反応を検査することもできます。しかし、それ以上の詳しい検査が必要とされる場合は、アレルギーの専門医への紹介を受けることになります。

 花粉症の治療には、抗ヒスタミン剤やステロイド剤の目薬、鼻のスプレーや内服薬がそれぞれの症状に応じて使われます。抗ヒスタミン剤は、ドクターの処方箋なしでも薬局で直接購入することができますが、ステロイド剤は処方箋が必要です。花粉症なのかどうかわからない、どの薬を使えばいいのかわからないというような方は、まずドクターの診察を受け、適切なアドバイスをもらいましょう。

回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん

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