パースエクスプレス Vol.187 2013年8月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第16回目は、「月経前症候群」についてです。
月経前症候群とは、排卵後(生理開始約14日前)あるいは特に生理前7~10日から生理開始までにみられる、心理的あるいは身体的に起こる様々な症状で、ほとんどが生理開始とともに症状が軽快するものです。よくある症状としては、理由もなく苛立つ、怒る、泣く、不安になるなど感情面での劇的な変化と、だるさやお腹の張り、乳房の張りと痛み、ニキビ、食嗜好の変化、常に眠たくなるあるいは逆に眠れなくなる、手足のむくみ、便秘や頭痛などの身体的なものが挙げられます。
約80%の女性は何らかの月経前症候群を経験し、その約20~30%が日常生活に支障を及ぼす中度から重度の症状を持つと言われています。はっきりとした原因は解明されていませんが、性ホルモンのレベルと脳内の神経伝達物質の変化とその相互作用によるとも考えられています。
「月経前症候群?」と感じる時には、まず手始めにいつどのような症状がみられるか、生理のサイクルとともに2~3ヶ月書き留めてみましょう。これがまず診断と対策プランを立てるための大切な情報になります。月経前症候群の場合は、必ず生理開始とともに症状が軽快して排卵期ぐらいまで全く症状がない期間があり、もしこれが軽快もせず継続する場合は他の疾患が疑われます。
月経前症候群を完治させることはできず、主には対症療法となります。これは、その人によって違う様々な症状とその程度にも寄ります。運動をする、生理前は塩分・カフェイン・アルコール・精糖を控える、またビタミンB6、ビタミンE、カルシウム、マグネシウムなどのサプリメントなどがいくつかの研究結果で効果があると言われています。症状によっては、低容量ピルや鎮痛剤、抗うつ剤などの薬の処方がされることもあります。Evening Primrose Oil (桜草オイル)など、植物系の抽出物などが自然療法として効果があるとされていますが、どれもまだはっきりと医学的には証明されているものはありません。
特に感情面での変化に関しては、ボーイフレンド・夫・パートナーや家族の理解とサポートが非常に大切です。私も、生理前にはヒステリーを起こして理由もなく夫や子どもにガミガミしがちです。しかし、もうすでに理解してくれている夫は「あー、また生理前なの?」と軽く流してくれています。一人で悩まず、月経前症候群によって感情面での問題が出てしまうこと、自分ではどうしようもないこと、助けが必要なことを説明して、理解してもらいましょう。症状がひどいと思われる場合は、ドクターの診察を受けアドバイスを受けて下さい。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん