パースエクスプレス Vol.186 2013年7月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第15回目は、「尿路感染症」についてです。
尿路感染症とは、膀胱炎を含め、尿の通り道である腎臓、膀胱、尿道に細菌感染を起こしたものを言います。主に、肛門周辺の様々な細菌が尿道から入って膀胱に炎症を起こし、排尿時の痛みや頻尿、残尿感、血尿などの症状が現れます。さらに進行すると、尿管を逆のぼり腎臓にまで感染による炎症が進んで腎盂腎炎を引き起こし、この場合だと腰痛や高熱などの症状も現れることもあります。男性よりも尿道が短い女性の方がかかりやすい病気です。
尿路感染症が起きる主な要因には、水分不足と長時間排尿を我慢することが挙げられます。体内の水分が不足することで生成される尿量が減少し、尿道付近から入り込もうとする細菌を尿で流し去ることができなくなるのです。また長時間トイレに行かないことも、尿道付近の細菌の進入を、流される前に許してしまうことになります。特に、暑い夏は汗で水分が奪われて身体が脱水気味になるため、また逆に冬は寒さで水分の摂取を避けてしまう傾向があるため、膀胱炎を起こす人が多くなるようです。しかしこれは気温が直接の要因ではなく、先に述べたように水分不足が大きな要因となります。またセックスの後(特に女性)、その行為により細菌が中に押し込まれたために感染を起こすことも多いようです。
治療は、抗生物質の服用(3~5日間)で簡単にできます。抗生物質服用の後1~2日で症状は落ち着きますが、指示された薬を最後まで必ず飲みきることが、再発を防ぐためにも重要です。また、水分をたくさん取り(1日1.5~2リットル)、定期的に排尿して尿により細菌を流し去るようにしてください。
膀胱炎は、くせになるものではありません。治療により完治できる病気です。繰り返し膀胱炎を起こす場合、結石や、尿路の解剖学的異常などの疑いがあるため、精密検査が勧められます。また、クラミジアやウレアプラズマなどの性行為感染症による膀胱炎様症状がみられることもありますので、そちらの検査が必要になることもあります。
以下は、尿路感染症予防のポイントです。
●水分を十分に取る(1日1.5~2リットル)
●長時間排尿を我慢せず、定期的にトイレに行く
●セックスの後、15分以内に排尿する
●排便後は前から後ろに拭く
症状が現れたら、ひどくならないうちに早めにドクターの診察を受けましょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん