パースエクスプレス Vol.183 2013年4月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第12回目は、「インフルエンザ予防接種」についてです。
インフルエンザにはA型、B型、C型があり、人間に感染を起こすものは“A型”と“B型”です。さらに、このA型やB型ウイルスの表面にある抗原が変異し、さまざまな“亜型”と呼ばれる変異種を作ります(“A香港型”や“Aソ連型”など)。この変異は、時に“鳥インフルエンザ”や“豚インフルエンザ”などのような驚異的な流行を引き起こすこともあります。
WHO(世界保健機構)は毎年、インフルエンザウイルスの種類や、その変異、流行の情報をあわせて、北半球および南半球での推奨ウイルス株(調剤内容)を発表します。それをもとに、各国が独自に毎年ワクチンを調剤するため(通常2種類の亜型A型、1種類のB型の3種類が混合されます)、各国でのワクチンの調剤内容は違ってきます。
【日本】
2012‐2013年冬季インフルエンザワクチン
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)
A/ビクトリア/361/2011(H3N2)
B/ウィスコンシン/01/2010
【オーストラリア】
2013年冬季インフルエンザワクチン
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)
A/ビクトリア/361/2011(H3N2)
B/ウィスコンシン/01/2010
今季に関しては、日本とオーストラリアで調剤内容が全く同じものになっていますので、ご質問者の方は再接種の必要はありません。ワクチンの効果は通常約1年持続するとされています。
ワクチンの3種の株が同じになることは、大変珍しいことです。通常は1、2種類の株が違っており、その場合は再接種が勧められます(再接種には、大きな副作用など問題は特にないとのことです)。
「冬に日本へ帰国するので、こちらで予防接種を」とお考えの場合、前述のようにオーストラリアと日本で発生しているウイルス株が違えば、効果がない可能性があります。ワクチンの抗体は接種後約2週間でできると言われていますので、日本へ2週間以上滞在する場合、帰国直後に日本で接種された方が効果は期待できるでしょう。
残念ながらワクチンの効果は100%ではなく、接種をすれば絶対にインフルエンザにかからないというわけではありません。ワクチンの目的はインフルエンザが重篤化しないようにするということです。なので、軽いインフルエンザに罹ったり、インフルエンザではなくても風邪を引くことは避けられません。また、ワクチンに調剤されていない種類のウイルスが、その年に流行する場合もあります。しかし、65歳以上の高齢者や6ヶ月以上の子ども、あるいは成人で何らかの慢性疾患をお持ちの方、HIV感染を含む何らかの免疫機能不全をお持ちの方、医療機関や高齢者福祉施設/養護施設の従事者、過去にインフルエンザで重症になったことのある方には、毎年予防接種を行うことが強く勧められます。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん