パースエクスプレス Vol.177 2012年10月号 掲載
【第6回】当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第6回目は、「うつ病」についてです。
日本からオーストラリアに来て大きく変わった生活環境や人間関係、英語での勉強やコミュニケーションなど、様々なストレス要因が重なり合い、うつ病を発症する患者さんは少なくありません。うつ病は“心のかぜ”、5人に1人がかかっていると言われるほどよくある心の病気です。
症状は憂うつ、悲しい、すぐに泣く、落ち込む、物事に関して興味がない、食欲の減退あるいは増進、不眠や過眠、疲労感、集中力の低下、外に出たくない、人に会いたくない、死や自殺について考える、頭痛や頭重感、微熱、めまい、息苦しい、胃痛、便秘など、精神的な症状から身体的症状まで様々です。発症のメカニズムは、脳内の神経伝達物質の機能不調だと言われています。
オーストラリアでは、日本のように初めから心療内科に行く必要はありません。まずGP(一般医)を受診し、多くの場合、最初に血液検査が行われます。それによって、過度の鉄欠乏や甲状腺機能の異常が上記症状の原因として発見される場合があります。しかし、それらの異常がなければ、うつ病の治療を相談することになります。
うつ病の治療で大切なことは、まずストレスを取り除き、できるだけ休養を取ることです。ストレスの原因が勉強や仕事であれば休学や休職を申請する、同居する人とのトラブルであれば住居を変える、当地での生活自体であれば日本に一時帰国する、などです。実行が難しい場合もあるでしょうが、ごく軽症の場合はそれだけで症状が良くなることがあります。しかし、それができずに症状が続く場合や症状が比較的重度の場合は、ドクターから抗うつ剤の服用を勧められることがあります。抗うつ剤は毎日定期的に服用し、開始3~4週間程で効果が出てくると言われています。すると、気分の落ち込みがなくなり体調が良くなってきます。しかし、すぐに服用を中止するものではなく、最低6ヶ月間の服用が勧められます。薬の長期服用による中毒性の心配は不要です。
また、心理カウンセリングを受けるという治療方法もあります。日本人患者さんには抵抗のある方もいるようですが、日本人のカウンセラーもいますので、試してみる価値は大です。話を聞いてもらうだけでストレスが晴れることもあります。
調子が悪いと思ったら1人で悩まず、オーストラリアでの生活を楽しく実りのあるものにするためにも、まずはドクターに相談しましょう。
回答者:日本語医療センター マネージャー 千綿 真美さん