日本語医療センター

パースエクスプレス Vol.176 2012年9月号 掲載


【第5回】当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第5回目は、「性病 クラミジア」についてです。


質問:クラミジアとは?
Sくん(27)学生

妊娠して、病院で血液検査を受けました。

 クラミジアは、性行為感染症(STI = Sexually Transmitted Infection) のひとつです。日本でもここオーストラリアでも、若い人たちの間での感染が年々増えています。クラミジアは、感染しても無症状で経過することが多く、約5人に1人しか症状が現れません。症状として女性では、おりものや下腹部痛、排尿時の違和感や痛み、不正出血など、男性では排尿時の痛みやペニス先端からの分泌物などがみられます。クラミジアは、一度感染すると薬で治療しない限り自然に良くなることはなく、放置すると女性では炎症が卵管から骨盤へと広がり、将来的に不妊の原因となることがあります。男性でも、尿道から前立腺または睾丸へ炎症が進む恐れがあります。セックスによって性器から性器へ感染することがほとんどですが、オーラルセックスによって咽頭に感染、アナルセックスにより直腸に感染することもあります。感染率が非常に高く、感染が診断されたら過去のパートナー、現在のパートナー共に検査・治療を受けることが重要です。尿あるいはおりもの採取の検査によって診断ができ、治療は1回または1週間の抗生物質の服用でほぼ確実にできます。また、治療終了の4~6週間後に再検査を行い、完全にクラミジアが治療できていることを確認することが薦められます。
 また、性行為感染症には、クラミジア以外に淋病、梅毒、性器ヘルペス、尖形コンジローム(性器イボ)、膣トリコモナス、B型肝炎、C型肝炎、HIV(エイズ)などがあります。

 近年、避妊手段として避妊用ピルの積極的な服用をオーストラリアで始める女性が多いようですが、望まない妊娠をしないように自ら対策をとることは大切なことです。しかし、その裏で「ピルを飲んでいるから大丈夫」と性行為感染症予防のための正しいコンドーム使用に十分な配慮が欠けたことから、今日の性行為感染症の流行の実態がうかがえます。エイズ問題は世界でも深刻ですが、クラミジアや淋病なども現在「自分は大丈夫」と安心してはいられないほど感染者が広がっています。どの性行為感染症にしてもコンドームの着用だけで大抵予防ができることを認識して、恥ずかしがらずにパートナー同士で話しあうことで、お互いの出会いを傷つけないようにしましょう。

回答者:日本語医療センター マネージャー 千綿 真美さん

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