日本語医療センター

パースエクスプレス Vol.175 2012年8月号 掲載


【第4回】当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第4回目は、「ビタミンDの欠乏」についてです。


質問:ビタミンDが足りない?
K子さん(33)主婦

妊娠して、病院で血液検査を受けました。

 近年、妊婦さんの必要血液検査項目にビタミンDの数値が取り込まれるようになりましたが、意外にもビタミンD不足を指摘される方が、とても多くみられます。普段一般の健診などでは、ビタミンDは検査されない項目なので、なかなか気付かれないのでしょうが、あるドクターの意見では、特に日本人女性の多くにある徹底した紫外線予防、“美白”ブームもビタミンD不足の傾向を招いているのでは、ということです。
 ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促進する働きを持ち、骨や歯の生成、維持、強化に重要な役割を持っています。ビタミンDは体内に取り込まれて、活性型ビタミンDとなり、身体に有効に働きます。不足すると 健康的な骨を維持するのに必要なカルシウムとリンが十分でなくなるため、深刻に進行すると子供の場合はくる病、大人の場合は骨軟化症、骨粗鬆症という骨の病気になります。妊婦さんに検査が行われるのは、母乳にはビタミンDがあまり含まれていないため、母体がビタミンD不足のまま、さらに赤ちゃんに影響しないようにするためです。
 ビタミンDは、食品からも吸収されますが、日光に当たって紫外線を浴びることによって皮膚で合成される唯一のビタミンです。ビタミンDを含む食品としては、魚・キノコ・卵黄・乳製品などが挙げられ、特にビタミンDの多い食品としては乾燥きくらげ(特に白きくらげ)・あんこうの肝・鮭・カジキ・ニシン・かわはぎ・マス・イサキ・秋刀魚・アジ・イワシがあります。オーストラリアの生活においてのネックは、上記のビタミンDが豊富な食材があまりないこと、そして紫外線が強いことを心配し、日焼け止めで全身カバーし日光に当たらないことが挙げられます。日焼け止めは紫外線をブロックしますので、皮膚でのビタミンDの生成は行われません。
 一日に必要なビタミンD摂取量は、成人で5μg程度なので、紫外線(日光)を浴びるだけでも十分な量のビタミンDを体内で合成できると言われています。1日に15分~20分程度、日焼け止めを塗らない皮膚を太陽に当てることは大切なことなのです。

回答者:日本語医療センター マネージャー 千綿 真美さん

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