日本語医療センター

パースエクスプレス Vol.172 2012年5月号 掲載


【第1回】「大好きなオーストラリアだけど、病気になったらどうしよう。ケガをしたらどうしよう。どの薬を買ったら良いんだろう」といった医療についての質問は、慣れない地では必ず出てくるはず。そんな時のために、当地での医療の専門家が一般読者からの質問にお答えします。第1回目は、「避妊用ピル(経口避妊薬)」についてです。


質問:避妊用ピルは安全なのでしょうか?
A子さん(21)ワーキングホリデー

セックスの時にコンドームを付けたくないから、というのも理由かも。

 日本でも10年以上前に解禁された「避妊用ピル」ですが、西欧諸国に比べるとまだまだ使用に躊躇している日本人はいるようです。しかし、ここオーストラリアに来てからボーイフレンドや友達から避妊用ピルのことを聞いて、始めてみたいという女性は非常に多くなってきています。

 避妊用ピルは、正しく服用することでその避妊効果は99.5%といわれ、また生理が規則的に始まる、生理痛や出血量が少なくなる、月経前緊張症候群(PMS)が軽くなる、ニキビを改善する、卵巣嚢腫や卵巣がん・子宮体がんなどの発生リスクが低くなる、などの利点が挙げられています。価格も手頃で、製薬会社のブランドにもよりますが1ヶ月分で約10ドル前後から販売されています。もちろん、副作用というリスクもありますが、そのリスクは望まない妊娠をするリスクに比べたら比較にならないほど低いという理由で、西欧諸国では多くの医師が積極的に避妊用ピルの服用を推奨しています。最近では、避妊用ピルと同じ効果をもち、毎日の服用が不要で皮下に埋め込みをする「インプラント」や、子宮内に留置する「ミレーナ」などの使用も増えてきています。

 では、ご質問にあった副作用についてですが、避妊用ピルの服用を始めてから軽い吐き気、少量の不正出血、乳房の張りや痛み、わずかな体重増加などがみられることもありますが、大抵2~3ヶ月以内に落ち着いてきます。深刻なものとしては、血栓症のリスクが高くなるということがありますが、その発生はごく稀です。また、喫煙は血栓症のリスクを高めますので、避妊用ピルを服用するにあたっては禁煙が勧められます。乳がんを患っている場合、避妊用ピルはその進行を早めるともいわれています。血栓症や乳がんの既往がある方には、避妊用ピルの服用は勧められません。そして、ご家族にそのような既往のある方がいる場合は、医師に相談しましょう。

 最後に重要なことですが、避妊用ピルでは性行為感染症(性病)は防げません。西欧諸国では、特定の相手と一緒に性行為感染症にかかっていないか、スクリーニング検査を受けることは珍しくありません。検査でお互いがクリアであれば、その時からコンドームを使わなくても心配はないということになります。しかし、その確信がない場合は、避妊は避妊用ピルを服用するとしても、必ずコンドームの使用が必要です。

回答者:日本語医療センター マネージャー 千綿 真美さん

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